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研究班概要

地域医療におけるリスク・ベネフィットコミュニケーション 薬局情報支援モデルの構築

研究目的(概要)
地域保健の拠点として,薬局は,医療用医薬品,一般用医薬品(OTC薬),医薬部外品や健康食品の販売から在宅治療支援までを担っている.しかし,現状は生活者・患者(以下患者)および医療従事者に対するそれらの情報支援体制は不十分である.本研究では,地域医療を担う薬局および患者に対する情報支援サービスの体系的な標準モデルのシステム構築により,国民の保健や薬に対する啓発・意識向上ならびに医療関係者の資質向上を図ることを目的に,以下の研究を連携して行う.

1)   患者支援の薬剤師・医療関係者に向けた情報資材(カウンセリング,評価情報)標準化モデルの開発
2)   患者に向けた情報資材(シェルフトーカー,カウンセリング,評価情報)の標準化モデルの開発
3)   体系化した情報支援(アカデミック・ディテーリング)システムの構築

 

本研究に関連する国内・国外の研究動向及び位置づけ

医薬品,医薬部外品や健康食品の使用において,患者は医療従事者の適切なアドバイスにより,安全性の確保が可能となる.しかし,医薬部外品(化粧品等)では健康被害が拡大し,OTC薬はインターネットでの販売も可能となり,購入者の安全性の確保に向け,リスクコミュニケーションをいかに効果的に行うかが最大の課題である.また,現在,薬局は機能が分化しており,住民にとって利用する薬局が用途によって異なる.平成9年に,日本薬剤師会は「薬局のグランドデザイン」化を公表した.今後は,トータルの薬局機能として,「セルフケア」,「調剤」,「在宅・地域医療」を担っていくことが期待される状況であるが,現在はそれぞれが有機的に連携しておらず,情報も不十分である.

情報支援モデルシステムを構築し,その活用が必要と考えられる.海外では,エビデンスに基づき評価した総括的な薬物治療に関する情報の提供において,アカデミック ディテーリングを用いたリスク・ベネフィットコミュニケーションが確立している(Avorn J, NEJM 1983. Cochrane 2007).オーストラリアでは,OTC薬の購入に当たり,自己診断チェックシート(シェルフトーカー)が用意され,症状や安全事項の確認が事前に可能である.本研究では,地域保健において,アカデミック ディテーリングを基盤とするエビデンスに基づいた評価された情報提供とその支援システム構築を,患者向けと薬剤師および医療従事者向けに行う。

消費者と医療従事者には情報の理解度のギャップがあり,それをつなぐものとして,リスク・ベネフィットコミュニケーションが重要である.その定義は「リスク・ベネフィットに関する情報を専門家と消費者が共有し,消費者が独立した判断(shared decision making)ができるように意図されたコミュニケーション」とされている(Fischhoff B, 2001改).
 
アカデミック・ディテーリングは,患者および医療従事者に対するエビデンスに基づいた情報提供を目的とし,薬物治療に関し有効性・安全性・費用対効果を考慮した適切な判断が行えるように支援・推進する活動のことをいう.患者に説明する資材をコマーシャルベースの情報に頼らず,共通の評価資材の作成・利用を推進し,患者安全確保に向けた教育的な手法の一つである.
シェルフトーカーは,OTC薬,医薬部外品,健康食品などの購入にあたり,まず患者自身でチェックできるシートで,使用が適切かどうかを検討できるセイフティーガードの役割を担う.
 

 

本研究の学術的な特色及び予想される結果と意義

本課題の特色は,地域保健における医薬品(OTC薬含む),医薬部外品,健康食品などの情報に関し,患者および医療従事者向けにコマーシャルベースの情報ではなく,エビデンスに基づく中立の系統的な情報システムをわが国ではじめて構築し,それをインターネット上で公開し,その有用性を客観的に評価することで,わが国における患者の安全確保に向けた情報支援に関する研究を発展させるものである.

また,患者と医療従事者間の情報格差の解消をめざし,その視点で「社会における望ましい医療・医薬品情報の共有のあり方(対話型のShared Decision Makingの実現)」の基盤を検討していく上で,新しい学術的な手法の開拓を目指すものである.
本研究の学術的な特色及び予想される結果と意義