医療関係者と患者が情報を共有し、協力して治療に臨むために

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医療関係の方に向けて

認知症とは?


認知症とは、2004年に厚生労働省で「痴呆」から言い換えられた言葉です。加齢による単なる物忘れとは違い、脳の細胞が死滅することで過去の記憶が失われたり、時間や場所が分からなくなったりして日常生活や社会生活に支障をきたす状態のことです。

患者数は?


65歳以上の高齢者のうち、認知症患者数は2012年時点では約462万人(15%)と報告されています。年々増加しており、2025年には65歳以上の高齢者の約5人に1人の割合になる見通しです。
 

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             「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」
             (平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業 九州大学 二宮教授)による速報値
             ※各年齢の認知症有病率が上昇する場合の将来推計
             ※%は65歳以上の人口に対する割合

認知症の種類は?


認知症;下表に詳細を示します。

■軽度認知症(MCI);認知症の前駆段階であり、認知機能の低下が年齢相応以上に認められる状態をいいます。

■若年性認知症;65歳未満で発症した認知症は若年性認知症です。65歳以上で発症する認知症と医学的には同じですが、就労者が休職・退職を余儀なくされるため、家庭における経済的な負担や介護者となる家族の負担、社会的な損失が大きいことが問題となっています。


★認知症の原因疾患
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★罹患者数が多い認知症の特徴

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★脳の分野別機能

最も罹患者数が多いのは、神経変性認知症です。
神経変性認知症は、それぞれ変性する部位の機能に応じて特徴的な症状が現れます。
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認知症の症状は?


大きく2つに分類されます。
 
★中核症状 脳の障害により起こる症状で、認知症の患者さんには必ず起こります。


 記憶障害 ; 記憶を司る海馬が委縮し、記憶力が低下する。

 見当識障害 ; 時間や場所、人物などが分からなくなる。

 失語 ; 読む、書く、話す、聞くなどの言語機能が失われる。

 失行 ; 運動機能に問題はないが、正しい動作が行えない。

 失認 ; 5感を通じて理解していたことがわからなくなる。

 遂行機能障害 ; 物事を理論的に考え、計画し、実行することができなくなる。 など


★行動・心理症状 中核症状に付随して起きますが、起こらないこともあります。

 不眠 ; 夜眠れなくなる。昼寝をしすぎる。

 徘徊 ; あちこち歩き回り、見当識障害のため家に帰れなくなる。

 幻覚 ; いないものが見えたり、声が聞こえたりする。

 妄想 ; 事実ではないことを強く思い込む。物盗られ妄想や被害妄想がある。

 異食 ; 食べ物ではないものを食べてしまう。

 暴言・暴力 ; 身近な人や介護者に暴言・暴力をふるう。

 うつ状態 ; 気分が落ち込み、ふさぎ込み、閉じこもりがちになる。 など

認知症の診断は?


下記の問診と検査から診断を行います。

 

1.  患者さんとそのご家族に対する問診

  発症時の様子と経過、中核症状、行動・心理症状、病歴、服用しているお薬などについて聞かれます。

 

2. 認知機能検査

  日本では長谷川式簡易知能評価スケールが広く用いられています。
  認知症が気になる方はチェックしてみましょう。
  なお、この検査だけでは認知症の診断はできません。
  ※国際的には『Mini Mental State Examination(MMSE)』が用いられています。

 

3. 検査

  一般身体検査・・・血液検査、尿検査、心電図検査 
  脳の一般検査・・・脳波測定、腱反射などの神経学的検査 
  脳画像診断検査・・・X線検査、CT、MRI            など

 
 

認知症専門医をお探しの方はこちらを参照してください。日本認知症学会


 

認知症の治療は?


現在、認知症を根本から治療する薬や治療法はありません。
そのため、中核症状と行動・心理症状の進行を緩和させることが治療目標となります。


★薬物療法

アルツハイマー型認知症レビー小体型認知症には、主に中核症状の進行を緩和するお薬があります。
行動・心理症状には症状に合わせたお薬が処方されることがあります。
 
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アルツハイマー型認知症の中核症状の進行を緩和する薬​

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レビー小体型認知症には、ドネペジルのみ適応があります。​

 

 
アルツハイマー型認知症の治療薬剤選択アルゴリズム​

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神経雑誌(2012)114巻3号より抜粋    

※メマンチンは1日1回5mgから開始し、1週間に5mgずつ増量し、維持量を20mgとする

 


行動・心理症状(BPSD)に対する治療薬
 
・かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン(第2版)  
パブリックコメント募集期間終了(日本老年精神医学会)
厚生労働科学特別研究事業により作成された、認知症専門医受診までの一時的な使用、もしくは受診後の継続投与に対応した、BPSDに対する向精神薬使用ガイドラインです。



★非薬物療法


薬を使わず、患者さんの五感を使うことで脳を刺激して脳の障害の進行を防ぎ、残存機能を高めたり、楽しい時間を共有することで、脳の活性化を介して意欲や学習能力を向上させる治療法があります。

・バリデーション療法
・リアリティーオリエンテーション
・認知刺激療法
・回想法
・運動療法
・音楽療法
・エマニチュード
・アニマルセラピー   など



★治療に関するHPリンク

薬物療法、非薬物療法について詳しいHP
・認知症ONLINE
・認知症介護情報ネットワーク

薬価を調べることができるHP
・管理薬剤師.com



 

高齢の患者さんに対する薬物療法は?


高齢者は複数の疾患を抱えていることが多く、多剤併用になりやすい状況です。
多剤併用の問題点は、医療費の増大、コンプライアンスの低下、有害事象の増加など様々あります。

そこで高齢者に対する薬物療法は、『3つのS』に留意することを推奨されています。
Small ; 薬の種類・用量を少なめに
Short ; 服薬期間は短めに、必要以上に長期に渡り処方しない
Simple ; 朝1回・朝晩2回など、服用方法・回数をシンプルに




認知症の患者さんにおいて特に慎重を要する薬物

定型・非定型抗精神病薬
三環形抗うつ薬
オキシブチニン
ヒスタミンH1,H2受容体拮抗薬
ベンゾジアゼピン系睡眠薬
抗不安薬


それぞれの薬剤の副作用発現リスクが高いことに加え、認知機能を低下させる危険性があります。
上記のリスク薬による有害事象が疑われる場合や、新規に処方する場合、以下のフローチャートにしたがって慎重に検討を行うことが推奨されています。 (日本老年医学会)







 

認知症の患者さんの介護はどうしたらいいの?


介護者にとって認知症の患者さんの介護は、患者さんの症状の程度によりますが、精神・身体・経済的に大きな負担となることが多いです。そのため、介護者は自分だけで介護を抱え込まず、公共のサービスをうまく使ってゆくことが大切です。

★介護内容や様々なサポートについて紹介しているHPリンク集
・認知症介護情報ネットワーク
・認知症ねっと
・いっしょがいいね.com