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NPS(National Prescribing Service)Medicinewise について

 
訪問日時:2017年3月22日10:00-12:00
場所: NPS Medicinewise
出席者:
Robin Lindner (Client Relations Manager, Health Technologies)
Lyndell Coutts (Communications Lead –Choosing Wisely Corporate Affairs & Governance)
山本 美智子(昭和薬科大学教授)
佐藤 嗣道(東京理科大学講師)
参考資料:
・Choosing Wisely Australia 2016 Report
 
背景・目的

 NPS (National Prescribing Service) Medicinewiseは、オーストラリアの医療者・患者向け医薬品情報・疾患情報などの医療情報基盤として設立された、政府から独立した機関である。アカデミック・ディテーリング活動を通してエビデンスに基づいた中立的な情報提供を行い、医薬品の適正使用を推進している。それらの情報は、独立した、営利目的ではないエビデンスに基づいた情報となっている。しかし、情報提供だけでは、患者や医療従事者の行動を変えることは難しい。このような背景と基盤をもとに、最近、医療従事者と消費者との対話を支援するChoosing Wisely Australiaの活動が加わった。
そこで、NPS Medicinewise内に設置されたChoosing Wisely Australiaの目的と活動の実際について知ることを目的に、担当者より聞き取りを行った。
 
インタビュー内容

1)Choosing Wiselyの目的
・Choosing Wiselyの目的は、患者さんの安全を守ること、無駄をなくすことである。すなわち、不必要なケアによって患者に害を及ぼすことがないようにすることである。医療費の削減は一義には掲げていない。
 
<参考>
・Choosing Wisely Australia 2016 Reportには、以下のように記載されている:「Choosing Wiselyはグローバルな社会運動であり、医療における検査、治療、および処置の適切な使用についての医療従事者と消費者の対話を支援することを目的としている。」
・米国発祥の世界的なキャンペーンであり、日本でも2016年10月にChoosing Wisely Japanが発足し、そのウェブサイトが公開されている(http://choosingwisely.jp/)
 
2)Choosing Wisely Australiaチームの設置
・これまでのNPS Medicinewiseの活動では、主として医療に関する中立的な情報提供をしてきたが、人々の行動を変えるには不十分であった。
・Choosing Wisely Australiaは、2015年にNPS Medicinewise内に設置された。
・メンバーは、フルタイムで換算すると4.5人であり、多くは、NPSの業務と兼任している(NPSの職員数は約250名)。
・様々なバックグラウンドの専門家からなるチームである。今回、インタビューに応じたRobin Lindnerは化学専攻であり、Lyndell Couttsはコミュニケーションの専門家である。
 
3)Choosing Wisely Australiaの活動の概要
 ニュース、SNSなどのメディアの活用、フォーラムの開催などを通じて、医療従事者と消費者の対話を促し、行動を変えるため、以下のような様々なキャンペーンを展開している。
 
3-1)キャンペーンのキーとなる内容(消費者向け):医師に対する5つの質問
・検査、治療、処置の中には、その患者にとってはベネフィットがほとんどないものがあり、害を及ぼす可能性があるため、患者・市民に対して「医師に次の5つの質問をしよう」というキャンペーンを行っている。
①この検査または処置は、私にとって本当に必要ですか?
②それにはどんなリスクがありますか?
③よりシンプルで安全な選択肢はありますか?
④それらをしない場合、何が起こりますか?
⑤費用はどのくらいですか?
 
3-2)医療従事者向けのキャンペーン:チャンピオンになりませんか?
・医療従事者に対しては、「Choosing Wisely Australiaに関して、保健サービスのチャンピオンになりませんか?」というキャンペーンを展開している。
・そのために、医療従事者と患者の対話に役立つツールを提供している。
・例えば、「あなたのうつ病について知っておく必要があること」と題したシートを作成している。表面には、良くなるのに薬が助けとなること、良くなるまで時間がかかること、他の治療法が記されている。また、裏面には主な副作用症状が絵とともに記されており、さらなる情報にアクセス可能なウェブサイトが紹介されている。
・上気道感染症についてのシートでは、一般に、抗生物質が最良の治療ではないこと、休息、自宅療養、鼻づまりや頭痛を和らげる薬が、よくなる助けとなることが記されており、さらに個々の患者に適した対処法にチェックを入れて患者に渡すように作られている。
 
3-3)キャンペーンの方法
・以下のような様々な方法、媒体を通じてキャンペーンを行っている。
・サイエンス系のジャーナル、商業系のジャーナル、ニュースメディアを活用
・Youtubeなどのメディアの活用
・Facebook(主に消費者用)
・Twitter(主に医療従事者用)
・Consumer health forum:アカデミアの団体と合同で学会を開催し、提案を行っている。
・患者団体との連携も重要である。
・消費者とパートナーシップを保つことが大事である。
 
3-4)薬剤師と看護師の役割
・患者とのコミュニケーションにおいては、医師のみならず、薬剤師と看護師の役割は重要である。
 
考察・感想

 オーストラリアは、患者向け医薬品情報(CMI)やそのユーザーテストの研究においては、パイオニア的存在で、現在もなお、世界の研究をリードし、発展している状況を伺うことができた。
 CMIは、EU各国のように患者に渡す箱の中に添付されておらず、薬局で適宜患者に提供されていた。CMIの使用形態は、患者向医薬品ガイドにも活かせる可能性があり、大変参考になった。また、ほとんどの患者がCMIのことは認知しているとのことであった。
薬局で、患者にCMIを渡すタイミングは、新しい処方、用量の変更時などで、その都度、個々の患者あてに、住所・氏名を記入し印刷して手渡していた。
国内では、自主的に患者向医薬品ガイドを入手することが前提であるが、検索できるサイトとしてPMDA以外では提供されていない。PMDAのサイトは、患者向医薬品ガイド一覧も用意されているは、検索サイトは医療関係者と消費者・患者兼用で、しかもあらゆる情報を検索できるように作られているので、目的の患者向医薬品ガイドまで行きつくのに時間がかかる。
オーストラリアでは10以上のCMIに特化した検索サイトがあることも、広く普及している一因と考える。その代表的な機関がNPSである。ここでは、CMIのみならず、疾患から薬の情報、健康に関するトピックまでエビデンスの基づく統合的な情報として、医療関係者および消費者・患者に提供している。このような情報基盤は、国内でも必須ではないかと思われる。しかし、NPSは、近年、情報を作り提供するだけでは、国民の健康に積極的にかかわれない部分があるとして、NPS内にChoosing Wisely Australiaを立ち上げた。今後は、患者が積極的に医療にかかわる姿勢を示すことができるような方針のもと、その活動に力をいれているようであった。
 


NPS Medicinewiseのホームページ
 
 


Lyndell Coutts 氏(左)Robin Lindner氏(右)とNPSにて
 
 
 


NPS Medicinewiseの正面入り口


参考情報
Choosing Wiselyとは?